凛々しく臭った剣士魂

もう遥か昔のことです。

私の通う中学校のグランドの周りにはメタセコイアという木が植えてありました。

グランドを一周するように植えてあるその木の枝にはやわらかい葉っぱが付いていました。

グランドから校舎までは階段状に小ぶりな岩が埋め込んであり、その上部に校舎が建っていました。

校舎からはグランドが見おろせて独特の雰囲気がありました。

 

放課後のグランドでは、南左端で野球部が、北側ではソフトテニス部が、

西側ではサッカー部が、北側ではバレー部が練習に励んでいるのが見えました。

そして剣道部の面々が見えました。

 

剣道部は少数精鋭でした。

毎日ではなかったのですが、3人の男子剣道部員がやっていることがありました。

それはグランドの見おろせる最上段に並んで、何度も何度も叫ぶことでした。

発声練習です。

「メーン、ドーッ、コテーッ」。その声はかなり響いていました。

彼らが叫び始めるとグランドの何人かはわざわざ見上げてしばらくじっと見ているのでした。

 

その3人の中に私の親友がいました。

彼がどうして剣道部を選んで入部したのかは分かりません。

彼は生徒会長でした。

ただ、大変いたずら好きな生徒会長だったのです。

若い女の先生のスカートをめくって正座させられ叱られたり、

帰りのホームルームが行われているクラスの友人に大声で声をかけて、

そのクラスの担任にこっぴどく叱られたり、そういう人でした。

 

彼らが体育館で胴着を着て面をつけ、こてをつけているところを見たことがありました。

なかなか凛々しくてかっこいいなと思ったものです。

練習の休憩時間に彼らが外に出てきました。話をしました。

たわいもない話をしていました。

 

その時何か臭うのです。

何か臭わないかというと、何の問題もないという表情で友人は近づいてきてこれじゃないかというのです。

こてを外して私の鼻に近づけました。何というか、初めての臭いでした。

何年も洗っていない靴のようなにおいが辺りに漂いました。

 

「これかも知れない」と言って面の中を嗅がせました。くらっと来そうな臭いがしました。

私は聞いてみたのです。洗濯はしないのかと。

彼はあっさりと言いました。

「しないよ」と。

「そんな臭いの中で剣道をしてどうもないのか」と聞きました。

彼は言いました。「あまり気にならないよ」と。

私は驚きました。

こんな臭いの中で毎日やっているのはひょっとしてすごい事じゃないのかと。

においも気にせず、剣の一振りに全集中力を注いでいる。

これはやっぱりすごいことだと思ったのでした。



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