漫画みたいな体験

初めて剣道を体験したのは、高校の授業でした。

選択の授業で柔道と剣道を選択するのですが、

当時剣豪ものの小説をよく読んでいて、興味があったのと、

この機会がなければ一生竹刀を握る事はないだろうと思って、

私は迷わず剣道を選択しました。

 

初めての剣道は、予想よりもハードなものでした。

防具はあるのですが、特に素人同士の乱取り稽古の時は、

素人同士なのでお互いにただ竹刀を振るのに一生懸命で、

防具のないところに竹刀が当たりまくりで、全身あざだらけ。

そしてすぐに疲れて腕も上がらなくなり、

キツいし臭いし本当に辛かったという思い出があります。

 

その中でも特に忘れられないのが、指導員との乱取りをした時です。

その指導員の先生は、国体出場した事のある実力者でした。

当然こちらは素人だったので、先生からは好きなように打ってきていいと、

打ち返さないから安心しろと言われました。

 

そんな実力者と向き合える機会なんてないので、思い切ってやろうと思い、

蹲踞をしていざ先生の正面に立ち竹刀を構えると、

今までの人生で感じた事のない、恐怖とも違う、不思議な感覚に囚われました。

 

それはまさに隙がないという事は、こういう感じの事なのかという、

小説や漫画の中で良く描かれるような感覚でした。

 

先生から打ち返さないから好きに打ってこいと言われても、打ち込めないのです。

打ち込む場所が分からないのです。

 

一見、先生は力を抜いて軽く竹刀を構えて立っているだけです。

でも面、胴、小手、そのどこにも隙がないのです。

はっきりわかるのは、ここに打ち込んだらこうやられる、

ここに打ち込んでもこう打ち返されるという事が、

頭の中で生々しくシュミレーション出来るのです。

やられるイメージしか出来ないので、身体が動かないのです。

 

小説や漫画で描かれていた、向き合っただけで実力差がわかる、

そして実力伯仲の相手との試合は、お互いに中々動けない、

もしくわ先に動いた方が負けるという感覚は、本当にあるんだという、

なんとも言えない感動に身を包まれました。

 

自分が小説や漫画の中の人物だったら、

構えた直後に竹刀を置いて「参りました」と土下座をした方ことでしょう。

 

その後の私は言うなれば、追い詰められた小説の中の無名な浪人。

恐怖に追い詰められ、闇雲に打てども簡単にいなされ、

こちらが疲れ切ったところで、強烈な一撃を面に打ち込まれジ・エンド。

 

打ち返さないと言ったじゃないかという、不満の思いと、

鼻の奥のキナ臭い臭い、目の奥に瞬く星たち、

そして身体の芯に響く重くて痛い一撃は、一生忘れる事は出来ません。

その先生の言った「剣道に番狂わせはない」の一言は本当なのでしょう。



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